「栄光なき兵士たちに捧ぐ」


このアルバムは2007年の6月から11月の間、約5ヶ月の製作期間を経て

完成しました。僕自身のライブのスケジュールや、レコーディングに参加した

基本のメンバー(PK、横ちん、吉澤さん)のスケジュールや

エンジニアの高原さん、そしてスタジオのスケジュール、予算を調整しての

レコーディングだったため、結果的には随分と完成までに時を費やした

作品となってしまいました。収録曲のほとんどはここ3年間ですでに頻繁に

演奏し、デモCDにも収録してきた曲たちでしたが、新たにバンドアレンジし、

それを練って録音することは思いの外苦労が要りました。

すでにバンドアレンジし発表した「オリオン座流星群」等の楽曲も

バンドのメンバーが以前と違うため一からアレンジを練り直したりする

必要もありました。

記念すべき僕の一枚目のアルバムということもあり、

僕自身気負う部分も多いにあって、そのためスタジオ内が殺伐とする瞬間

も多々ありましたが、そんな時はメンバーや遊びに来てくれた仲間や

友人のちょっとした気遣いで和んだりし、今となってはただ感謝です。

このアルバムは仲間や友人の支えなくしては完成しえないものだったと思います。

改めて仲間の大切さを知った瞬間でした。

アルバムの構想は、ただ単純に曲を羅列したものではなく、

一貫した一つの物語になるようなそんなアルバムにしようと思っていました。

「栄光なき兵士たちに捧ぐ」

というのはすべての人生という戦場でもがき苦しみ、それでも

光を求めて歩んでゆこうとするそんな人たち(自分自身を含め)に

僕の歌を届けたいと思い、そんな気持ちを込めたタイトルです。

少々仰々しく感じるタイトルですが、

最初のアルバムだし、自分が歌い表現することの根源を表す

タイトルのような気もするので気に入ってます。

それでは収録曲の解説を。


1,「東京ファック」


この曲はすべての楽器を同時に録音しました。いわゆる「一発録り」です。

イントロの横チンの凶暴なベースが聴き所です。

いわゆるソロアーティストのデビュー作の1曲目がこういう楽曲で

あるという事は僕のミュージシャンとしての立ち位置がわかりやすくて

いいなと思います。言いたいことを端的に、よりストレートに伝えるには

こういう音楽表現が一番いい。

自分がどういう土壌から来たのか再確認できた1曲です。

次のアルバムはこういう楽曲中心のものになるかもしれません。




2,「少年」


間違いなくこのアルバムのハイライトの一つです。

この歌は僕がここ10年で書いた曲の中でおそらくベストなものの

一つです。それくらい自分でも重要な歌です。

安易に答えや結論を自分の歌に込めることが僕は嫌いで

人生は終わりなき問いかけであると僕は思っているので

この曲の最後の一節は僕のアイデンティティーそのものといっていいでしょう。

バンドアレンジは苦労しましたが、吉澤さんのピアノが

素晴らしいドラマを生んでくれています。




3,「バイバイ若草荘」



この曲だけはバンジー時代から演奏していました。

収録曲の中でもっとも古い曲です。

イントロのギターとピアノでなぞるフレーズは

僕の中でまさに80年代を意識したものです。

今の時代、こういう「ベタ」な事をやる人が

いないのであえて挑戦しました。

このアルバムの根底にあるものは僕自身が

幼少時代から慣れ親しんでいた80年代の音楽に対する

愛情と敬意です。そこは好みが分かれるポイントでしょうが。

歌の内容は僕が実際住んでいたアパートを引っ越す際に

作ったのですが、あんまり若草荘とは関係ないものな気が

今更してます。今自分がいる場所から旅立つ決意を歌ったものです。




4,「打倒運命」


この曲は井の頭公園を散歩していたときにふとタイトルが

浮かんでそのイメージをふくらませて作りました。

四文字熟語が好きで、最初は「敗者復活」というタイトルに

するか悩んだ記憶があります。結果「打倒運命」。

ジョークなのか本気なのかすれすれのところを狙っていくのが好きです。

もちろん本気ですが。

デモCDにもバンドバージョンが入ってますが、

今回の方が出来は数段上です。とにかく聴き所満載です。

ゲストでものすごい(ほんとにすごいよ!)ギターソロを弾いてくれた321君、

そしてベースの川南君(彼は他にも4曲ほどベースを弾いてくれてます)の

地をはうようなベース、それに旧友の山口進くんの男泣きコーラスなど盛りだくさん。

吉澤さんのピアノも泣けます。



5,「絶望ファンクラブ」


この曲は今回のアルバムの中でもっともポップな曲の一つです。

古めかしいシンセの音がいい味だせば、

リズム隊が実に気持ちよいグルーブを出してくれています。

個人的にはPKのベストプレイが聴ける一曲だと思ってます。

川南くんのベースも良い。

専門的な話をすると、この曲はデジタル録音ではなく

アナログ録音をしたのですが、それが功を奏して

まさに目指すところの「ネオ80S」サウンドを出せたと思います。

特にお気に入りの一曲。



6,「歌舞伎町へようこそ」


長い間ライブの重要レパートリーとして歌ってきましたが

初収録です。当初はもっとロカビリー要素満載の曲にしようと

思っていましたが、結果的には色んな音楽の要素を含んだ

ポップな曲になったと思います。

歌い方はうんとやらしく甘く歌いました。

僕の歌はシリアスなものとシニカルなものの2パターンが

大まかにいうとありますが、この曲は後者の筆頭だと思います。

ロンドンに旅行に行って、日本に帰ってきて一番最初に書いた曲が

この曲でした。自分でもまったく意味不明な出来事でした。

この曲もゲストの321くんのギターソロが冴えてます。

横チンのキャラにないウォーキングベースも良いです。




7,「長距離走者の孤独」


去年の夏頃ツアーで岡山に行ったとき

ライブ会場の裏にあった駐車場でこの曲を書きました。

原曲はうんと昔からあったのですが、完成しないまま

放置されていて、その時にようやく曲のイメージが完成したのです。

楽しい反面、きつくもあったツアーの中で誕生した曲として

思い入れも深いです。サビのフレーズがその時の心情を表しているように

思います。

この曲は記念すべき一番最初にレコーディングされた曲でした。

アレンジはこれでもかとドラマティックにしました。

とにかくピアノの旋律が美しい曲です。


8,「TEENAGE DISTRACTION


この曲はその他の楽曲が下手すれば重々しくなりがちになってしまうのを

和らげるために書き下ろしました。とてもライブを意識して書いた曲です。

こういったストレートなパンクの曲を書くのは高校生以来かもしれません。

僕のルーツが垣間見れる楽曲だと思います。

録音するときに極力上手に演奏しないように気をつけよう、というのが

メンバー間のキーワードでした。

僕はそうしなくてもギターの腕前の問題で最初から上手に演奏できませんが・・・。

この曲は横チンが大活躍です。途中リードボーカルもとってます。

横チンがボーカルをとる瞬間はまんまテルスターの曲みたいです。

その他沢山の友達が「oiコール」で参加してくれてます。

ライブでやるのが楽しみな一曲です。



9,「武蔵野ブレイクダウン」



武蔵野のジャックナイフと名乗る以上は武蔵野にちなんだ曲をアルバムに

入れないわけにはいきません。

この曲はアルバムの中でも最もポップな曲の一つです。

とにかくサウンドを80年代にする事に情熱を注ぎました。

80年代「風」ではなく「80年代」です。

徹底したおかげで異色の曲になったと思います。




10,「青の残響音」


アルバム唯一のバラードです。このアルバムは10曲目になるまで一切

スローな曲がありません。ここでようやく一息って感じです。

この曲はライブ盤にアコギとピアノのみのバージョンが入っていますが、

今回はガラッとアレンジを変えて打ち込みを導入してみました。

アダルトなギターを弾いてくれたのは321くん。

吉澤さんが作ってくれたリズムトラックにばっちりはまって

とても泣ける曲になったと思います。

真夜中に目を閉じながら聴いていただきたい一曲。



11,「拝啓ロックンロール」



「青の残響音」で心地よく微睡んでいるとこの曲のイントロで

叩き起こされると思います。

ソロになってからの僕のテーマソングです。

この曲の歌はマイクを手に持ってスタジオを真っ暗にして

一発で録ったのですが、歌い終わって気がついたらヘッドホンが破壊されていました。

レコーディングなのにも関わらず思わず白熱してしまった瞬間でした。

その甲斐あってアルバム中もっとも生々しい楽曲です。

とにかくすべての楽器が怒りもがき泣いています。

この曲がラジオでかかったりしたら面白いんだけどな。

怒濤のリズム隊の咆吼をご堪能あれ。

曲のクライマックスでは(板谷)祐さんの絶叫が聴けます!

今回の夢の競演の一つです。

すごいよ!



12,「滑走路」



この曲はバンジー時代からの僕の王道といった感じの曲です。

人生で一番書いたパターンの曲はこういったストレートなエイトビートの曲で

町田といえばこれだ!と古くから僕を知っている人もきっと満足してくれるでしょう。

僕自身もこういうタイプの曲は得意中の得意なので

とても楽しく録音できました。

とてもいい曲だと思います。



13,「オリオン座流星群」


この曲をレコーディングするのは3回目です。

ライブ盤にも入っているから人によってはこれで4バージョン目かもしれません。

ですが、今回のが一番ドラマチックです。

曲のテンポも若干上がったのでポップになりました。

この曲は川南くんが健闘してくれています。

すばらしいベースです。

とにかくすべての楽器の演奏がいいです。

僕もこの曲に対する思い入れは半端じゃないので、今回も

素晴らしいテイクになって満足しています。

もしかしたら次のアルバムにもこっそり入っているかもしれません。

そのくらい好きな曲です。

町田直隆のアンセムとしてこれからもずっと歌い続けてゆく歌です。